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 フォーラム21メンバーが参加した講習会や展示会などの内容を紹介します。


 電気設備学会講習会 「元気な名古屋の竣工建物紹介」 参加報告                          
報告者:小林 浩(トーエネック)

 平成19年2月13日に中部大学名古屋キャンパスで行われた、電気設備学会主催の講習会「元気な名古屋の竣工建物紹介」に参加しましたので、その概要を報告します。


 1.ルーセントタワーの紹介(講師:丸山拓也氏(日建設計))

■オフィス照明のベースはFHP45W×2灯用で25〜100%調光可能。デザインとしてはフラット感を重視し凹凸を少なくした。ルーバーを下に取り外さなくてもランプ交換ができるように配慮している。初期照度補正や人感センサによる制御も導入。
■入館者がもつICカードにはEdy機能があり、ビル内のキャッシュレス化を意識している。事務所入り口にはセキュリティ用のカードリーダーがあるが、リーダー部分を取り外すことができるようになっており、レイアウトによって移動が可能。
■オフィスのコンセプトは、ゆとりと柔軟性。空調の細分化やスプリンクラの増加により、間仕切りの設置の自由度を高めている。600mm角のグリッド天井も採用。
■特高変圧器は東芝製。菜種油を使用した環境調和形変圧器を使用。モールドやガスよりコンパクトで低損失。容量は12500kVA×2台で、1台でも想定最大電力を供給できるように余裕をもった設備としている。
■ビル内では3階毎に高圧キュービクルを設置した高圧配電を2系統設けている。各階には、建物西側に屋外扱いとなるテクニカルバルコニーを作っており、そこにキュービクルなどをおいている。6.6kVで配電することで低損失を実現。キュービクルには標準で三相500kVA、単相3000kVAの変圧器を設置している。空調がビルマルチのため電源容量が大きめになっている。
■OA機器容量は50VA/m2を想定しており、幹線は120%負荷(60VA/m2)まで使用できるように選定してある。さらに増設が必要なときにはテクニカルバルコニーに変圧器を増設することで対応できる。
■空調負荷削減のため西側に窓を作っていない。窓とブラインド間で強制的に空気の循環を行うエアバリアファンを採用。
■空調設備は、高層階のオフィスではビルマルチを使用。屋外機を各階のテクニカルバルコニーに設置している。低層部や店舗などはガス焚冷温水機を使用。
■外壁に光触媒タイルを使用。

2.ミッドランドスクエアの紹介(講師:村尾忠彦氏(日建設計))

■日本で五番目の高さ(247m)。JRタワーズは245m。一位はランドマークタワー(333m)。
■200m級のビルが4つもある駅前は日本にはない。東京駅前には近くに皇居があるため、超高層ビルを建てることはできない。
■通常高層ビルは敷地の南側に建てる。これはビルの影をなるべく自敷地に落とすためであるが、ここでは商業地のためその規制を受けない。
■超高層ビルでは電波対策が重要。名駅前の高層ビルの形はテレビ塔からの電波への影響により決まっている。ミッドランドでは、テレビ塔からの電波がJRタワーズとミッドランドで多重反射するため対策を行っている。
■西側には窓を設けていないが、これは空調負荷の削減のため。
■オフィスの三大クレームは、エレベータ、空調のドラフト、窓周りの暑さ寒さ、といわれている。
■エレベータはダブルデッキ・シースルー・シャトルを採用。この3つがそろったエレベータは世界初。
■ダブルデッキエレベータのシャトル運転により、建物内部にある低層・高層エレベータスペースを共用できるため、レンタブル比(床面積に占めるオフィススペースの割合)が75%以上と、通常のビル(70%)より高くできた。
■機械室を7〜8階に設置。地下には広い駐車場が地下6階まであるため、さらに地下に機械室を設置することが困難であった。
■建物は53.2m四方の真四角である。各階のオフィススペースは奥行き15.3mのコの字型に統一されており、フレキシビリティを高めている。
■商業スペースには6階にシネマコンプレックスがある。下の階には店舗がありシネマを見た人が降りるときに店舗を見て回る「シャワー効果」をねらっている。
■耐震対策としては、ゆれを吸収するためのダンパ(ATMD)を屋上に設置している。200m以上の超高層では効果的な対策。
■避雷対策では、屋上に水平に避雷導体を設置している。避雷針のような突針を立てると振動が問題となる。昔のビルの屋上にはエレベータ機械室ががっちりと作られていたので、あまり問題とはならなかった。
■LCCO2を標準的なビルと比較して約30%削減している。LCCは26%削減。環境性と機能性を総合的に評価するCASBEEでは3.3のSグレードの評価である。

3.感想
■身近な建物ということもあり、その内容をいろいろな観点から説明していただき大変面白い内容であった。
■村尾氏は意匠設計担当であったが、施主といっしょに高級テナントの誘致活動まで行ったそうで、設計者にはそういう仕事もあるとのこと。
■機会があれば、実設備を見てみたい。

                                           以 上

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